小型・省スペースPCは非力な性能のPCである一般的に考えられてきました。
そんな中、2018年2月ZenコアベースのAPUが登場し、小型・省スペースPCの世界を一変させました。
4コア8スレッドのCPUに内部グラフィック機能付きのRyzen5 2400Gは非常に高性能かつ省電力です。
私もSocket FM1 APUのA8-3820からRyzen5 2400Gへ変えましたが、性能向上によるPC操作の快適性が格段に上がりました。
今回は、現在でも通用する省スペースPC「Ryzen5 2400G」の記事です。
小型・省スペースPCに最適なAPU
小型・省スペースPCを運用する場合、SocketFM2+までのグラフィック統合型CPUでは、ミドルタワー以上のデスクトップPCと比較して性能が大きく劣っていました。
特に私の使用していたA8-3820はクアッドコアではあったものの、最大動作クロックが2.8GHzと低く、PC操作が今時のPCと比べて少し重く感じました。
Llanoベースのクアッドコアと組み合わせたGPUコアはRadeon HD 6550Dと、グラフィック性能としては「おまけ」レベルのものでした。
Ryzen5 2400Gが発売され、Ryzenコア+Radeon Vega Graphicsを組み合わせたAPUは、小型・省スペースPCに高性能化をもたらしました。
Ryzen5 2400G の性能
4コアRyzen APUの一部製品をスペック表にしました。
2400G | 3200G | 3400G | 4350G | |
CPUコア数 | 4 | 4 | 4 | 4 |
スレッド数 | 8 | 4 | 8 | 8 |
GPUコア数 | 11 | 8 | 11 | 6 |
基本クロック | 3.6GHz | 3.6GHz | 3.7GHz | 3.8GHz |
最大ブースト・クロック | 最大 3.9GHz | 最大 4.0GHz | 最大 4.2GHz | 最大 4.0GHz |
L1キャッシュ合計 | 384KB | 384KB | 384KB | 256KB |
L2キャッシュ合計 | 2MB | 2MB | 2MB | 2MB |
L3キャッシュ合計 | 4MB | 4MB | 4MB | 4MB |
CPUコアアーキテクチャ | Zen | Zen+ | Zen+ | Zen2 |
製造プロセス | 14nm | 12nm | 12nm | 7nm |
デフォルトTDP | 65W | 65W | 65W | 65W |
最大メモリ速度 | 2933MHz | 2933MHz | 2933MHz | 3200MHz |
グラフィックス周波数 | 1250MHz | 1250MHz | 1400MHz | 1700MHz |
発売日 | 2018/2/12 | 2019/7/7 | 2019/7/7 | 2020/7/21 |
内蔵GPU性能の比較は、概ね3400G>4350G>2400G>3200Gの順になります。
といっても性能差はわずかなので、絶対的なGPU性能が欲しい場合は別途グラフィックカードを載せた方が効果的です。
参考までに2400GでメモリをDDR4-3200設定にOCしたFF14ベンチ結果です。
このメモリはDDR4-3200設定だと度々システムが不安定になっていたので、実際にはDDR4-3000設定で常用していました。
Zen+コアAPUまでの最大メモリ速度サポートが2933MHzまでなので、Ryzen5 2400Gと組み合わせるメモリクロックの限界はDDR-4 3000~3200あたりでしょう。
ちなみに、DDR4-3000設定だとFF14ベンチスコアは5245でした。
フルHDの動画再生であれば十分すぎる性能です。
また、Radeon Vega Graphicsコアは動画フレーム補間機能であるFluidMotionが非公式ですが使用できます。
特にアニメのフレームレート(1秒間あたりに再生される静止画の枚数)は24fpsなので、60fpsにフレーム補間されるとアニメの動きが滑らかかつクッキリハッキリみえるようになります。
今でもRyzen5 2400Gが選ばれる理由
- CPU部分はRyzenアーキテクチャの4コア8スレッドなのでネットや事務作業は十分快適。
Ryzen 2000Gシリーズは、それより前の世代のAPUと比較して、IPC(Instruction Per Cycle:1サイクルあたりの命令実行数)が向上したのでPCの動作がキビキビ動くようになりました。
- GPU部分はRadeon Vega Graphicsコアでグラフィック性能が大幅に向上した。
GPU部分がRadeon HD 6550DからRadeon Vega Graphicsになったことで、グラフィック性能が大幅に向上し、フルHDの動画を余裕で再生できるようになりました。
- Ryzenコアより前の世代(Godavari)のAPUから、性能が2倍以上と飛躍的に上がった。
各種ベンチマークソフトの総合スコアをA10-8750Kと比較すると、Ryzen5 2400Gが軒並み2倍以上の差をつけています。
- それでいて小型・省スペースPCに搭載できる省電力なAPU
大幅に性能が向上したにもかかわらず、TDP 65Wと省電力でワットパフォーマンスに優れたAPUが身近な存在になりました。このようなAPUは5~6年前には考えられませんでした。
- Ryzen5 2400Gの発売以降、4コア8スレッドAPUの性能は大きく変わらない。
4コア8スレッドのAPU製品で比較した場合、2400G・3400G・4350G間の性能向上率は10~20%程度の違いしかありません。
- Ryzen5 2400Gと組み合わせるB450チップセットが安定している。
Ryzen5 2400Gと組み合わせるB450チップセットは発売から2年以上経過しているため、BIOS更新により不具合など修正されており最新チップセットと比較してB450チップセットは安定しています。
- B450チップセットはm.2 NVME SSDも増設できるためデータ転送が速い。
B450チップセットはm.2スロットがあり、NVME SSDを載せることができます。
NVMe SSDはPCIe 3.0 x4の転送速度で動作するため、データコピーなどが非常に高速です。
NVMe SSDを使用することで、5.7GBのイメージデータを4秒程度でコピーできました。
これは最新APU(Ryzen PRO 4000シリーズ)とB550チップセットを組み合わせたシステムであっても、NVMe SSDはPCIe 3.0 x4の速度しか対応していません。
なので、NVMe SSDの速さは「Ryzen5 2400G+B450」の組み合わせと「Ryzen PRO 4750G+B550」の速さは同じです。
- 動画フレーム補間機能のFluidMotionが非公式だが使用できる。
Bluesky氏が公開しているソフトウェア「Bluesky Frame Rate Converter」を導入することで、動画フレーム補間機能のFluidMotionを使用することができます。
再生した動画の動きが60fpsで滑らかかつクッキリハッキリみえるようになると、以前の環境には戻れないですね。
Ryzen5 2400G+B450は鉄板
「Zenコア+Radeon VegGraphics」のRyzen5 2400Gと、「m.2 NVME SSDが搭載可能になり足回りが格段に良くなった」B450チップセットマザーとの組み合わせは安定したPCシステムです。
Ryzen5 2400Gは性能・省電力・コストパフォーマンスが優れているため、とても評価が高いAPUです。
国内価格は発売当初1万9800円(税込2万1384円)でしたが、2年経過した現在でも中古相場で値崩れしていないのがその証拠です。
高性能なTDP65WのRyzen APUで小型・省スペースPCを組んでみてはいかがでしょうか?
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